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執筆者の写真京都カラスマ大学

【授業レポート】食べることは生きることー大人が知っておきたい微量ミネラル「鉄・亜鉛・銅」

更新日:2021年4月5日



マスク、消毒液、納豆。

春先のコロナ第一波で、全国の店先から一斉に消えたもの。


食事から病気を予防しようとする人々が買い求めた納豆は、含有するビタミンKが効くと喧伝されたのがきっかけでした。食べることは、私たちのカラダに、いったいどんな影響を及ぼしているのでしょう。


2013年から(ほぼ毎年)恒例の日本農芸化学会さんと京都カラスマ大学の共同企画、サイエンスカフェ。今回は、「食べることは生きること」と題し、私たちの身体に占める鉄・亜鉛・銅の微量ミネラルに着目し、健やかに生きる上で欠かせない「食べる」を考えてみました。


本講義に先立ち、授業づくりに協力してくださったおふたりの挨拶がありました。


1人目は、教室として工房を貸してくださった「清課堂」当主・山中源兵衛さん。清課堂さんは江戸時代・天保年間より続く錫(すず)の工房として、仏具や香炉などを制作されています。錫の加工において、鉄は道具として、亜鉛は金属接合の材料として使われているそうです。ハードなものづくりに欠かせない素材でもありますが、「食べることにも興味があります」としめくくられて、生徒との距離が縮まりました。



2人目は、日本農芸学会のコーディネーター・由里本博也さん。日本農芸学会の活動紹介、今回のサイエンスカフェが134回目(!)であること、市井の人と触れ合える貴重な機会への期待感を述べられました。


生徒は、0歳9か月から60代までの計10名。アイスブレイクとして、まず2人1組になって相手を皆に紹介する他己紹介タイムを設けました。みなさんの授業参加のきっかけは


「鉄・亜鉛・銅の括りが気になった」

「診療で亜鉛不足と言われたので関心があった」

「サプリメントの勉強中」


など、ずばりミネラルに関心があることがわかりました。



講師は、神戸大朋先生。


まず、体内では合成出来ず、食物から摂取する元素がミネラルであること(但し、水素、炭素、窒素、酸素は除く)、鉄分よりも少ないものが微量ミネラルであること、ミネラルの働きは骨などの硬組織として体を構成すること、身体の調子を整えるとの定義説明がありました。

普段、すっかり化学から遠ざかっているわたしたちは、微量ミネラルを説明する元素記号の登場に、懐かしんだり、すっかり忘れてしまっている自分に苦笑いしたり、、、。


次に、人が欠乏している5つの微量栄養素(ビタミンA、鉄、ヨウ素、葉酸、亜鉛)の紹介と生体内の亜鉛、鉄、銅の化学的性質がをイオン化傾向レドックス(酸化還元)反応から説明されました。学生時分に習ったはずの「酸化」「還元」の用語も、うろ覚えながらなんとかついていけます。


講演中盤、専門用語と図解にややお疲れ気味のわたしたちを救うため、ご近所の「喫茶チロル」から、ココアが配達されてきました。なぜココアなのか? 神戸先生が優しく解説。実は、ココアに含まれるカカオマスは、鉄はもちろん、亜鉛(5g前後)、銅(2g前後)も含む優秀な食品(100g当り)。温かい栄養補給が、生徒たちの学び心をもうひと押しします。ここから、鉄・亜鉛・銅の関係性が解き明かされます。




【鉄】

赤血球を作るヘモグロビン中にヘム鉄として存在。酸素の運搬を担う。従い、鉄不足は貧血を生む。しかし、過剰摂取しても能動的に排出は出来ない。過剰鉄分を示す先天的ヘモクロマトーシスの保有率が欧州欧米人には多いそう。バイキング?血の気の多さの由来はそこにあるの?と生徒一同、盛り上がりました。


【銅】

エネルギーの代謝に貢献する。鉄を体内に吸収するためには銅が必要。鉄と違い銅は能動的に排出できる。


【亜鉛】

これぞ、神戸先生の専門分野です。全ての臓器に存在する。骨格形成、成長促進、味覚機能、ホルモン調整等、生命活動に欠かせない。日本人の10%~30%が亜鉛欠乏。但し、亜鉛の長期的な過剰摂取は銅の欠乏を引き起こす。亜鉛を多く含むのは、ダントツで牡蠣、ついで、豚レバー、牛肉(肩)。ちなみに、大豆はそのものではなく味噌等の発酵食品にする事で、遊離する亜鉛が増えて亜鉛の吸収量が高まるそう。生徒一同、日本人が古来より発酵食品を摂取する理由の一つが分かり、先人の保存食の知恵は健康の知恵でもあったのか、と納得しました。


最後、先生からは「バランスと期間が大事」との言葉がありました。正直、レポーターの僕は、これまで身体の調子が悪くなってから食べ物のことを考える、それ以外の時は、身体が欲するものを食べるという姿勢でした。もう少し長期的に食べることと向き合いたいなと思いました。それでも、罪悪感を抱く種類の食べ物の誘惑はあるのですが…(笑)。


講演後も、先生、生徒同士が興奮冷めやらぬ状態で質問し合う様子が垣間見られ、体内で起こる化学反応が、目の前で発生している様に感じられた授業でした。









レポート:白倉幸司

写真:こばっしー


 
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