※2024年3月1日(金)に開催された京都カラスマ大学授業「一緒につくる、やきものの街・五条とこれから」ボランティアスタッフによる授業レポートです。
3月の京都の見どころは早咲きの桜の花だけじゃない。3/15(金)〜24(日)にかけて川端〜東大路の五条通周辺で「京都・五条やきもの市」が開催されている。
▼京都・五条やきもの市instagram
今回の授業でコーディネイターを務めたのは、この市の代表である清水愛子さん。陶芸家の谷口晋也さん、浦矢幸見さん、教室となったギャラリーbonon kyoto /セレクトショップ Routes*Roots 店主である安井くまのさんをゲストに迎え、生徒のみなさんと登壇者が車座になるかたちでお話が始まった。
京都のやきもの市と聞くと、毎年六道参りに合わせて行われてきた真夏の「陶器まつり」を思い浮かべる方もいらっしゃるのではないだろうか。しかしこの「陶器まつり」は、コロナ禍の中、さまざまな原因が重なり、一度開催が途絶えてしまった(注:現在は徐々に復活している)。
そんなタイミングで生まれたのが「京都・五条やきもの市」。五条坂の南北の歩道にずらり屋台が並ぶさまが夏の風物詩でもあった「陶器まつり」と、「京都・五条やきもの市」とは、また違う方向性が見られるのがおもしろい。
「この市の特徴は市場を作るのではなく「お店を渡り歩く」ところです」と、清水さんはいいます。
だからお客さんはいろんなカフェやホテルでちょっと休みながら、五条を巡ることができる。「もっと気軽に、自分たちがいいと思う形でやってみるのもいいんじゃないか」という思いからこのスタイルができあがったのだとか。だから、今回快く教室として場所を貸してくださった安井さんの「bonon kyoto」や「NOHGA HOTEL」など、やきもの(陶芸)を生業としない店も《地域の一員》として参加している。
これが「京都・五条やきもの市」誕生の理由のひとつ目だ。
ところで、「陶芸家」「窯元」「職人」「作家/芸術家」など陶器をつくる人の呼び方にも色々ある。
それぞれの呼び方にはちょっとした違いがあるように思うが、実際は明確に分けるのは難しいらしい。とくにこの地域は、清水焼の窯元を家業として受け継ぎながら作家もやっている人もいるというのが特徴だそうで、だからこれらの定義も人によって違っている。
その難しさは、谷口晋也さんが「自分からは肩書きを名乗ることをやめることにしている」ほど。谷口さんは「人がこうだと思ってるのが僕の姿」というスタンスで、「自分が作ってる作品の全体像を見て、その方が「〜ですね」っておっしゃる呼び方(肩書き)でいい」といいます。
陶芸というと陶芸家のイメージにつながりやすく、窯元さんや職人さんなどのイメージから少し離れてしまう。そこで『焼き物という響きが合うかなというので、この市の名前は「やきもの市」としました」と、清水さん。
同時に、この「京都・五条やきもの市」という名前には、
「売り出しが目的というよりかは、回を重ねるごとに(人と人のつながりが深まって)五条のまちが素敵な場所になればいいな」
「いろんな方が来て、やっぱり焼き物っていいなとか、新しい発見とか出会いとかお客さんも出品者同士も出会いの場みたいな、重ねるごとに盛り上がってくれたらいいな」
という想いも込められているそうだ。
これが「京都・五条やきもの市」誕生の理由の2つ目である。
そして、最後の理由は「作り手に若手がほとんどいない」ことに付随している。
浦矢幸見さんによると、京都のまちなかは若手陶芸家にとって、お手頃なアトリエや工場を探すことが難しい場所らしい。昔ながらの古い町家は、暮らすために狭い面積を効率よく使ってきたため、制作の場には向いていない。また、地方のように「うちの隣、ちょっと空いてるよ」とか、「うちスペース広いから貸してあげるよ」ということがあまりないそうだ。
「そのため、京都で陶芸を学んだ学生は、市内で活動をすることが叶わず、近くの信楽や丹波とかに行ってしまうことが多いんです」という20代の浦矢さんの声は、とてもリアルだ。
そこで清水さんは、このやきもの市がもっと若者を応援できる拠点になれるよう、京都で学び、活動している若い作家さんに声をかけて積極的に出品してもらうようにしているそうだ。
清水さんは『やきもの市が出会いの場所、きっかけの場所になったらいいなと思う。そうすることで業界全体が活性化していって、次の世代に焼き物のまち「五条」を受け継いでいけたらなと思ってる』とおっしゃっていた。
これがやきもの市誕生の理由の3つ目である。
最後に質問タイム、、ではなく逆に、清水さんから受講生へ、「やきもの市でやってみたいこと、これがあったらもっと面白くなるんじゃないかと思うことを自由に提案してみてほしい」というお題が出された。
「焼き物と人とのタッチポイントを増やす」「酒器だけ飯碗だけなど陶器を種類別に販売する」「長年使ったものも新しいものと同時に展示して、陶器の経年変化を楽しんでもらう」、、、さまざまな意見が飛び交い、「京都・五条やきもの市のファンクラブをつくって、やきもの市で出会った人が後日もう一度集まり、買ったものや、その後の陶器の成長を見せ合うなんてのはどうか」というユニークな意見まであがった。
そうだ、焼き物は作り手が作る形が完成形というだけでなく、出会った使い手とも共に成長してくれるものだ。
なんだか昔の人が焼き物をはじめとする暮らしの中の「モノ」に顔と手足を付けて、「魂の宿る《付喪神(つくもがみ)》」を思いついた理由もわかる気がする。これから「京都・五条やきもの市」を通して、わたしたちが100年つながる人やモノとどんな《素敵な出会い》をしていくのか、楽しみになる学びの時間だった。
レポート:たてばやし
写真:程冠宇
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